Rで解析:入院や死亡をまとめて治療効果を比べるwin time法「wintime」パッケージ
「wintime」パッケージは、臨床試験の2群を、入院や死亡のように重さの違う複数のイベントをまとめて比べ、治療群が対照群より良い状態で過ごせた時間(win time)として治療効果を求めるパッケージです。渡すのは、イベントを軽い順に行、参加者を列に並べた発生日数の行列と、同じ形のイベント有無の行列、それに治療群か対照群かを示すベクトルです。年齢などの共変量を加えた解析や、ブートストラップによるp値の計算もできます。生存時間解析に慣れた人が、複合エンドポイントの結果を日数という分かりやすい単位で示したいときに役立つのではないかと考えます。
パッケージバージョンは1.0.1。Windows 11 x64 (build 26200)のR version 4.6.1で確認しています。
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パッケージのインストール
下記コマンドを実行してください。
# パッケージのインストール
install.packages("wintime")
# パッケージの読み込み
library("wintime")コマンド例
詳細はコメント、パッケージのヘルプを確認してください。例は、京都府内の診療所に通う高齢者20人を、宇治茶を毎日飲む群(治療群)と飲まない群(対照群)に10人ずつ分け、1年間(365日)入院と死亡を追った架空の試験です。
win time法では、参加者の状態を「イベント無し」「入院した」「亡くなった」のように重さの順に並べ、各時点でどちらの群が軽い状態にいるかを比べます。その差を追跡期間で積み上げた日数が治療効果です。そのため、Timeとその有無を示すDeltaは、行を臨床的に軽いイベントから重いイベントの順に並べます。イベントが起きなかった人の日数には、観察を終えた日を入れます。
# 入院までの日数(入院しなかった人は観察を終えた日)
# 1〜10人目は対照群、11〜20人目は宇治茶を飲む群
hosp_day <- c(
60, 120, 365, 45, 200, 90, 365, 30, 180, 365,
210, 365, 95, 365, 300, 365, 150, 365, 365, 240
)
# 死亡までの日数(亡くならなかった人は観察を終えた日)
death_day <- c(
250, 365, 365, 160, 365, 365, 365, 120, 365, 365,
365, 365, 365, 365, 365, 365, 330, 365, 365, 365
)
# 入院したら1、しなかったら0
hosp_event <- c(
1, 1, 0, 1, 1, 1, 0, 1, 1, 0,
1, 0, 1, 0, 1, 0, 1, 0, 0, 1
)
# 亡くなったら1、亡くならなかったら0
death_event <- c(
1, 0, 0, 1, 0, 0, 0, 1, 0, 0,
0, 0, 0, 0, 0, 0, 1, 0, 0, 0
)
# 軽い入院を1行目、重い死亡を2行目にした日数の行列
Time <- rbind(hosp_day, death_day)
# 同じ並びのイベント有無の行列
Delta <- rbind(hosp_event, death_event)
# 群の指標(対照群は0、宇治茶を飲む群は1)
trt <- rep(c(0, 1), each = 10)
# 共変量:年齢と握力(kg)
age <- c(
74, 79, 67, 85, 71, 76, 70, 83, 78, 65,
72, 68, 81, 75, 70, 66, 84, 73, 69, 77
)
grip <- c(
24, 20, 33, 16, 29, 23, 30, 18, 21, 35,
28, 32, 19, 25, 30, 34, 17, 27, 31, 22
)
# 参加者を行、共変量を列にした行列
cov <- cbind(age, grip)
# 対照群の人数、治療群の人数、イベントの数
n0 <- sum(trt == 0)
n1 <- sum(trt == 1)
m <- nrow(Time)カプラン・マイヤー法で状態の確率を推定:kmコマンド
| オプション | 意味 | 初期値 |
|---|---|---|
| n0 | 対照群の人数 | なし |
| n1 | 治療群の人数 | なし |
| m | 重さの順に並べたイベントの数 | なし |
| Time | イベントの発生日数の行列(m行×(n0 + n1)列)。行はイベント、列は参加者。行は臨床的に軽いイベントから重いイベントの順に並べる | なし |
| Delta | イベントの有無を示す行列(m行×(n0 + n1)列)。行と列の並びはTimeと同じ | なし |
kmコマンドとmarkovコマンドは群の指標を受け取らず、TimeとDeltaの先頭n0列を対照群、残りを治療群として扱います。対照群を先に並べてから実行してください。
# カプラン・マイヤー法で群ごとの状態の確率を推定
z <- km(n0, n1, m, Time, Delta)
# 宇治茶を飲む群のイベント時点
z$unique_event_times1
[1] 95 150 210 240 300 330 365
# 宇治茶を飲む群の状態の確率(行はイベント無し・入院・死亡、列はイベント時点)
round(z$dist_state1, 3)
[,1] [,2] [,3] [,4] [,5] [,6] [,7] [,8]
[1,] 0.9 0.8 0.7 0.6 0.5 0.5 0.5 0
[2,] 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.4 0.4 0
[3,] 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.1 0.1 0マルコフモデルで状態の確率を推定:markovコマンド
| オプション | 意味 | 初期値 |
|---|---|---|
| n0 | 対照群の人数 | なし |
| n1 | 治療群の人数 | なし |
| m | 重さの順に並べたイベントの数 | なし |
| Time | イベントの発生日数の行列(m行×(n0 + n1)列)。行はイベント、列は参加者。行は臨床的に軽いイベントから重いイベントの順に並べる | なし |
| Delta | イベントの有無を示す行列(m行×(n0 + n1)列)。行と列の並びはTimeと同じ | なし |
# マルコフモデルで群ごとの状態の確率を推定
z2 <- markov(n0, n1, m, Time, Delta)
# 宇治茶を飲む群の状態の確率をkmコマンドの結果と比べる
round(z2$dist_state1, 3)
[,1] [,2] [,3] [,4] [,5] [,6] [,7]
[1,] 0.9 0.8 0.7 0.6 0.5 0.5 0.5
[2,] 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.4 0.4
[3,] 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.1 0.1
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win time法で治療効果を推定:wintimeコマンド
| オプション | 意味 | 初期値 |
|---|---|---|
| type | win time法の種類。”ewt”、”ewtr”、”rmt”、”max”、”wtr”、”rwtr”、”pwt”、”ewtp”、”rewtp”、”ewtpr”、”rewtpr”、”rpwt”から指定 | なし |
| Time | イベントの発生日数の行列(m行×n列)。mはイベントの数、nは参加者の総数。行はイベント、列は参加者。行は臨床的に軽いイベントから重いイベントの順に並べる | なし |
| Delta | イベントの有無を示す行列(m行×n列)。行と列の並びはTimeと同じ | なし |
| trt | 群を示す長さnの数値ベクトル。治療群は1、対照群は0 | なし |
| cov | 共変量の行列(n行×p列)。行は参加者、列は共変量 | NULL |
| model | 状態の確率の推定に使うモデル。”km”または”markov”。指定しなければtypeに応じて決まる | NULL |
| resample | 観察データの計算の後に行う再標本化の方法。”boot”(ブートストラップ)または”perm”(並べ替え)。指定しなければtypeに応じて決まる | NULL |
| resample_num | 再標本化の回数 | 0 |
| time_restriction | 解析を打ち切る日数。typeが”rmt”、”rewtp”、”rewtpr”、”rpwt”のときに必要 | NA |
| seed | 再標本化に使う乱数のシード | NA |
| max_time_inc | 指数モデルで追跡期間の先を補うときに、状態の確率を更新する最大の日数の幅。EWT、EWTP、EWTPR、RMT、REWTP、REWTPRのみ。指定しなければ両群を合わせたイベント時点ごとに更新 | NA |
主なtypeは次のとおりです。”ewt”は期待win time、”ewtr”は対照群を基準にした期待win time、”rmt”は打ち切り日数までで治療群が有利だった平均日数、”wtr”はwin time比、”pwt”は参加者の組ごとに比べるwin timeです。結果のtrt_effectが治療効果の推定値です。
# 期待win time(EWT)で宇治茶を飲む群が良い状態で過ごせた日数を推定
r_ewt <- wintime("ewt", Time, Delta, trt)
# 治療効果の推定値と、イベントごとの内訳
r_ewt$trt_effect
[1] 118.4
r_ewt$components
[1] 65.4 53.0
# win time比(WTR)をブートストラップ100回でp値まで計算
r_wtr <- wintime("wtr", Time, Delta, trt,
resample = "boot", resample_num = 100, seed = 2026
)
# 治療効果の推定値、p値、勝ちと負けの数
r_wtr[c("trt_effect", "p", "wins", "losses")]
$trt_effect
[1] 0.328125
$p
[1] 0.01175476
$wins
[1] 64
$losses
[1] 21
# 最初の180日に限った、治療群が有利だった平均日数(RMT)
r_rmt <- wintime("rmt", Time, Delta, trt, time_restriction = 180)
r_rmt$trt_effect
[1] 45.3
# 年齢と握力を共変量に加え、対照群を基準にした期待win time(EWTR)を推定
r_ewtr <- wintime("ewtr", Time, Delta, trt, cov = cov)
r_ewtr$trt_effect
trt
94.94223
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Cox比例ハザードモデルで治療効果のz統計量を計算:COMPコマンド
| オプション | 意味 | 初期値 |
|---|---|---|
| n | 参加者の総数 | なし |
| Time | イベントの発生日数の行列(m行×n列)。mはイベントの数。行はイベント、列は参加者。行は臨床的に軽いイベントから重いイベントの順に並べる | なし |
| Delta | イベントの有無を示す行列(m行×n列)。行と列の並びはTimeと同じ | なし |
| cov | 共変量の行列(n行×p列)。行は参加者、列は共変量 | なし |
| trt | 群を示す長さnのベクトル。治療群は1、対照群は0 | なし |
wintimeコマンドのtype = “max”の中で使われるコマンドです。結果は名前の無いリストで、z統計量、治療効果の推定値、その分散、p値の順に入っています。
# 年齢と握力で調整したCox比例ハザードモデルを当てはめる
r_comp <- COMP(length(trt), Time, Delta, cov, trt)
r_comp
[[1]]
trt
2.160131
[[2]]
trt
0.1825737
[[3]]
[1] 0.6197907
[[4]]
trt
0.03076255
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